東京地方裁判所 昭和31年(ワ)5448号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判所〕判決の認定した事実によると、訴外片桐政雄は、被告銀行に外務員として勤務中、昭和三十年四月から六月の間に、原告等に対し、当時被告銀行においては予金導入のため営業として顧客宅等銀行窓口外に進出して、特利(闇金利)つきの予金契約を取扱つて居り、自分は「予金係主任」の行員として右営業方針に従い契約を締結する権限をあたえられていると称して、原告らとの間に、月三分前後から五分程度に及ぶ高率の特利を約し、二、三カ月間は払戻をしないという据置期間を特約して、右据置期間内の特利を前払した上、五〇万ないし一〇〇万を越える金員をそれぞれ受領して普通予金契約を締結し、右受領の金員のうち各原告毎に一〇万円だけ被告銀行窓口に納入し、その余を納入しなかつた。
判決は右のように事実を認定した上、右片桐の行為は正当権限外の行為であり、予金者である原告らは銀行予金として許されない闇金利および利子前払、一定期間の払戻禁止等の特殊な特約をした点に銀行予金者としての過失がみとめられるから表見代理も成立しないと判断したが、片桐の右詐欺行為は被告銀行の外務員として予金吸収のため本来「予金の勧誘」をすべき地位を冒用し、その権限を超えて契約の締結、予金の授受等予金吸収目的上の相関連した全面的行為に及び、被告銀行の予金吸収事業を不当に執行したもので結局被告銀行の業務の執行につきなされたものであると判断して被告銀行に民法第七百十五条の使用者としての責任ありと断じたが、被害者である原告らも予金契約締結にあたつて銀行予金者としての相当の注意を怠つた過失があるとして過失相殺の抗弁を認めた。そして未成年者である原告らについては、過失の有無は契約にあたつた親権者についてこれを論ずるべきであるとしてつぎのように説明している。曰く。
「もつとも、原告らのうち未成年者である石井洋子と石井力の両名については、両原告自身は契約締結にあたらなかつたものと認めらるべきこと前認定のとおりであつて、両原告自身に過失の責めるべきものはなく、実際に契約締結に当つた親権者父石井百蔵に過失があつたのである。しかし、損失分担の公平を期する民法第七二二条第二項過失相殺の規定を適用する上において、損害の発生についての過失の有無は実際に契約締結、従つて損害の発生に関与した親権者についてこれを決するのが相当である。しかしてその分担率は契約が両当事者の相寄つて成立するものであるという事理に鑑み、原則として平等負担とすべきものと思われる。」